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2009年2月の記事

Always on the side of the egg

先日、村上春樹氏がエルサレム賞を受賞した事がニュースになっていました。ニュースでは「村上氏がスピーチでイスラエルに対する抗議を示した」旨が報道されていましたが、ネットでスピーチの内容を読んでみると(現地新聞はこちら)、氏の小説や人間に対するまなざしが非常によく伝わる内容でした。また、抗議についても、文化人の受賞スピーチにありがちな型にはまったものではなく、文学的な比喩を隠れ蓑(!?)にしつつ、相当踏み込んだ発言をしているのは胸に迫るものがありました。エルサレム賞というのは、“「社会における個人の自由」をめぐる優れた執筆活動に対して送られる文学賞”だそうで、皮肉にも社会システムが空爆という形で個人を死に追いやる事になってしまっているイスラエルに出向いてこうした主張を行った村上氏の行動は、同じ日本人として誇りに思います。

=以下一部抜粋=

"Between a high, solid wall and an egg that breaks against it, I will always stand on the side of the egg."

If there is a hard, high wall and an egg that breaks against it, no matter how right the wall or how wrong the egg, I will stand on the side of the egg.

Why? Because each of us is an egg, a unique soul enclosed in a fragile egg. Each of us is confronting a high wall. The high wall is the system.

「“高くて堅固な壁と、それにぶつかって壊れる卵の間で、私はいつも卵の側に立つ。”」

「もし高く堅固な壁と、それにぶつかって壊れる卵があるとしたら、たとえどんなに壁が正しく、どんなに卵が間違っていても、私は卵の側に立つ。何故か?私達それぞれが卵であり、壊れやすい殻に閉じ込められたかけがえのない魂だからです。私達それぞれが高い壁に立ち向かっています。高い壁とはシステムのことです。」

I have only one reason to write novels, and that is to bring the dignity of the individual soul to the surface and shine a light upon it. The purpose of a story is to sound an alarm, to keep a light trained on The System in order to prevent it from tangling our souls in its web and demeaning them. I fully believe it is the novelist's job to keep trying to clarify the uniqueness of each individual soul by writing stories - stories of life and death, stories of love, stories that make people cry and quake with fear and shake with laughter. This is why we go on, day after day, concocting fictions with utter seriousness.

「私が小説を書く理由は一つだけです。個々の魂の尊厳を表出させ、そこに光を当てる事です。物語の目的はシステムの網に私達の魂が絡めとられ、品位を失う事を防ぐ為に、システムに対する警笛を鳴らし、光をあて続ける事です。私は小説家の仕事とは、生死の物語、愛の物語、人々が泣き、恐怖に震え、笑いに揺さぶられるような物語を通じて、個々の魂の独自性を明らかにしようとし続ける事と確信しています。というわけで、私達は日々一生懸命に“作り話”を“でっちあげて”いるのです。」

私の稚拙な訳ではあまり魅力が伝わらないかと思いますが、「たとえどんなに壁が正しく、卵が間違っていても、私は卵の側に立つ」というような“まなざし”は我々が生きる上でとても大切なもので、それはもちろん「いつでも弱い者の味方」なんて事とは違う、もっと多面的で深遠な意味を含んでいると思います。また、“壁”というと、氏の代表的著作である『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』において暗喩的に用いられていた“壁”を思い出します。そして人の弱さや滑稽な部分を“神々しい”と尊び、実際それこそが人間の魅力であり、世の中の面白さであるという事を、氏の著作と翻訳作品は味わわせてくれていますし、成人する以前から村上作品の読者である私自身、それらの著作から大きな影響も受けています。中でも『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』や村上龍氏の『愛と幻想のファシズム』の読書体験は強烈で、まさに“システムに対する警戒感、反抗心”を意識し、自分の想いや夢を結実させる為のシステムは自分自身で手にしていたい、という思いが芽生えるきっかけになりました。ですから「物語の目的はシステムに警笛を鳴らし、光をあて続ける事」というくだりも、心から納得の出来るものでした。

そんな“まなざし”について語った村上氏のスピーチに勇気付けられる人はとても多いと思うんです。人の弱みにつけこみ、揚げ足をとり、失態を笑い、他人の堕落を楽しむような事に付き合わされがちの今の日本人にとっては特に。ですから、是非ともこうしたスピーチを小さなニュースで終わらせず、真意が伝わる報道をして欲しいと思います。少なくとも自国の大臣の酩酊会見を執拗に報道し、2重3重に国益を損なうよりは、「日本人作家が戦火に燃えるイスラエルの授賞式にあえて出席し、作家らしい表現力に満ちたスピーチによって、政治家などより遥かに踏み込んだ抗議を行なった。」事の真意を受け止める事の方が、遥かに有意義であろうと思うのです。それはオバマ大統領の演説に勝る魂が込められたメッセージだったのですから。

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マスタリング@HeartBeat Studio

一昨日は来月後半にリリース予定である『DuoRama 2 / 布川俊樹&納浩一』のマスタリングをハートビート・スタジオで行いました。エンジニアはshiosai作品を数多く手がけてくれている竹中昭彦さん。竹中さんはミックスの方向性を尊重した音作りをしてくれます。明確に決めているわけではありませんが、私としてはナチュラルに仕上げたい場合は竹中さん、クリアに抜ける味付けを加えたい場合はFlair(ビクタースタジオ)の名匠である川崎洋さん、というイメージで仕事を依頼しています。

マスタリング・エンジニアというと、レコーディング現場で録音を担当するレコーディング・エンジニアや、ミキシング・エンジニアに比較して地味な印象があるかも知れませんが、実際はその手腕によって曲の印象は大きく変わります。音楽制作に詳しくない人でも、ステレオの音量設定は変わらないのに、あるCDは音が凄く大きく、あるものは結構小さく感ずる事があるのではないでしょうか?それもマスタリングの音作りの一例です。(どちらがいいという事ではありません。大きなレベルが入った音楽は迫力はありますが、同時にダイナミクスを犠牲にしている為に繊細な表現力を失っています。) また、作品の主なターゲットがCDなのか、ラジオなのか、もしくは音楽配信や携帯の着メロなのか、、、等々によってマスタリングで作る音も違ってきます。例えば音楽配信ではリスナーは圧縮された音を聴く事が多いので、当然そこで音質が変化します。ですから劣化を見越してあらかじめその帯域を強調して補っておくわけです。それらはまさに職人的な耳と経験に裏打ちされた作業で、ミキシングの時とは違った視点も必要になる為、マスタリングを専門にするエンジニアが必要になる事が多いのです。最近ではミキシングエンジニアやミュージシャン自身がマスタリングまで行うことも増えていますが、個人的な意見としては、そこで初めて作品に接する新鮮な感覚を持ったエンジニアが客観的な視点から必要と思われる味付けを加える事の意義というのは結構大きいだろうと思っています。

今回も竹中さんは的確な判断によるいい仕事をして下さいました。一緒に立ち会った布川&納両氏も大満足の様子。作品の内容については後日またここで紹介しようと思います。発売は3月21日の予定です。


で、発売に向けてプレス&印刷の手配をと思い、業者に連絡をとったところ、何と国内最大手のプレスラインが止まってしまっているとの事。(プレスを請け負う窓口としては多くの会社がありますが、実際にプレスを行う工場は大手が経営するいくつかのラインなのです。)流通末端の実店舗における音楽CD販売の不振は数年前から深刻さを増してきていますから、時間が経てば当然大元のプレス工場にも同様の影響はあるのでしょうが、最大手が停止とは驚きました。ま、今回は別のラインでプレス可能との事ですから問題ありませんが、今後を考えるとちょっと心配です。

「公益法人なのに儲け過ぎ。親族のみで利益を配分か?」などと話題になっていた漢字検定ですが、最近空いた時間にやっていたのが任天堂DSのこのソフト。ここ10年くらいほとんどの用件はメール、PCソフトで済ませる事が多く、文字を書く事はめっきり少なくなりました。で、こうやって改めて漢字の書き取り等をやってみると、中学生レベルのごく簡単な漢字が思い出せなかったり、「あれ?ここに点がつくんだったかな?棒が一本少ない?」なんて迷ったりする漢字も多くて大ショック。病院の昼休みの時間を利用してドリルに励む毎日です。こうやってブログを書きながらポンポン変換している漢字も、書いてみると「あれ?」となる事も多いのでしょう。

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井上鑑×山木秀夫×高水健司×今剛 ライブ情報

現在shiosaiでアルバムを制作中の“井山大今”(井上鑑×山木秀夫×高水健司×今剛)が4月28日に目黒ブルースアレイにてライブを行う事が決定しました!この日は所謂アルバム発売記念という事ではなく、レコーディング終了報告といった意味合いになるでしょう。(レコーディングは来週と、3月中旬に予定されており、その後ミックス・ダウンに入りますのでおそらくこの頃に音とジャケットがほぼ出来上がっているような予想です。)何はともあれ、豪華メンバーによるライブにご期待ください!


AKIRA INOUE Produce 2 Days @目黒BLUES ALLEY JAPAN
(目黒区目黒1-3-14 ホテルウィングインターナショナル目黒B1 03-5496-4381)

4月28日(火)*********
「井山大今」 アルバム発売記念スペシャル
OPEN 18:00 / START 19:30~×2st (入替無し)
井上鑑 Keyboards
山木秀夫 Drums
高水(大仏)健司 Bass
今 剛 Guitars
様々な音楽シーンで30年来培ったコンビネーション、数々のヒット作品を生み続けてきた4人が、
何と!初のアルバムをユニット「井山大今」(いのやまだいこん)としてレコーディング!
今春リリース予定のアルバム収録新曲や育て続けてきた佳曲のあれこれを。

4月29日(水)*********
「タタキタタ」 featuring YOSHIDA BROTHERS and FRIENDS
OPEN 17:00 / START 18:30~×2st (入替無し)
井上鑑 Keyboards
仙波清彦 Percussion
井上富雄 Bass
吉田良一郎 津軽三味線
吉田健一 津軽三味線

井上鑑音楽監督による吉田兄弟10周年記念ツアー「いぶき」参加アーティストを中心に新たなMIXTUREを。
参加メンバーの書き下ろし曲やセッション曲、仙波師匠の小技も輝きます。ツアー終了スペシャル打ち上げライブは超前向きな未知のコラボレーションです!回文タイトルの意味はご自由に解釈して下さい。でも5拍子です!?
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4/28・29両日とも
前売券:テーブル席(指定)\6,000 / 立見(自由)\5,000
当日券は各料金\500UP (各税込) ※4/29のみ枚数制限あり、1組4名
当日シートチャージ¥525が掛かります(ご飲食代精算際にお支払頂きます)。
予約: e+(イープラス) / ぴあ
予約/問合せ先: 予約受付時間/月~土/12:00~20:00 ※03-5740-6041
公演当日のお問合せ: [店頭]TEL:03(5496-4381/2) 迄
発売日(BAJ Club会員先行): 2月19日(木)12:00~
発売日(一般): 2月27日(金)14:00~ ※発売初日のみこちらの時間

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Jazz Dentist (笑)

昨日はキーボーディストのフィリップ・セスのライブを見に六本木のBillboard Live Tokyoへ行って来ました。丁度shiosaiで制作中の井山大今(井上鑑×山木秀夫×高水健司×今剛)作品のレコーディング(あと2〜3日のレコーディングが残っています。)打ち合わせを兼ねて井上鑑さんもお誘いしました。今回のライブのメンバーはベースがピノ・パラディーノ、ドラムがサイモン・フィリップだったのですが、井上さんはピノ&サイモン共に一緒に仕事をした事があり、特にサイモンとはとても仲が良いとの事でした。

フィリップ・セス氏については以前このblogにも書きましたが、共演のピノ・パラディーノはつい先日もThe Whoのツアーで来日していましたし、その他私が聴いた事のある参加作品だけでも、エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ロッドスチュワート、エルトン・ジョン、ドン・ヘンリー、坂本龍一、ポール・ヤング、シール、ジョン・メイヤー等々の超大物、その他トガッたところではディアンジェロ、デ・ラ・ソウルなど、まあ、現在世界で最も大物感を漂わせるベーシストです。サイモン・フィリップは何と言っても『There and Back/Jeff Beck』における伝説的なドラミング!(ジェフ・ベックはコージー・パウエルに始まり、『Blow by Blow』のリチャード・ベイリー、『Guitar Shop』のテリー・ボジオなどドラミングの革命的プレイを引き出しながら歴史的な名盤を世に出しています。)ジェフ・ポーカロ亡き後はTOTOのレギュラードラマーでもありましたから、何とも豪華なリズム・セクションですね。

この日のピノは愛用のフェンダー・プレシジョンを封印し、もうひとつの代名詞であるミュージックマンのフレットレスを使用。(1曲だけ遠目にはラリー・グラハムモデルのような白いジャズ・ベースを弾いていました。)そのベースプレイはとにかくグルーヴィー! 派手なスラップ・ベースやギタリスト顔負けのスーパープレイとは無縁な、1音たりとも過不足を感じさせずに曲のグルーヴを決定づけるプレイで、音数を増やさずとも緩急自在に楽曲を演出してみせるのには驚嘆しました。派手なプレイは練習してマネが出来る気がする事も結構ありますが、あれはちょっと次元が違います。まさに天賦の才ですね。殆ど他人を褒めないアンソニー・ジャクソンが「ピノだけは本当に素晴らしい」とインタビューで語っていたのもうなずけます。
サイモンはおなじみのTAMAの多点セットで、見事に神経の行き届いたダイナミクスコントロールを聴かせてくれていました。80年代からずっと変わらぬプレイではありますが、それだけ早くから完成されていたんですね。

終演後、楽屋で井上鑑さんにサイモンを紹介して頂いた際、サイモンが「歯医者さんでジャズのレーベルをやっているの!Jazz Dentistだね(笑)!僕もこの前、歯を抜いた後にインプラントを入れたんだ。歯の治療はいつも大変だよ。」なんて言っていました。中学生の頃に聴いて、初めてドラマーの存在を意識させられた『There and Back』(それまでは「ドラマーってどんな曲でもズツタタってやっているだけで楽だな~。」なんて思ってたんですよ。笑)のサイモン・フィリップとそんな会話をしている事がちょっとミーハー的に面白かったです(笑)。

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